8月23日 日曜日 曇りのち晴れ
朝食は宿泊先で。地元のものが出ており少しずつ食べた。礼拝は、今回の目的の一つである黒い聖母像のある教会へ。日本国内にはここにしかないものである。フランスはガリアを中心に400体が確認されている。
多くの黒聖母像が元々は、赤や青に塗られていたことも確認されており、なぜ黒いのかは謎のままであるが、学者たちの意見を読むに、どうやら大陸ケルトの地母神などが関係しているだの、遠くは古代エジプトの恋歌、旧約聖書の雅歌、キリスト教に制圧されたローマに埋もれた地中海と中近東の様々な黒い女神たちが想起されるらしいのだ。謎とロマン溢れる存在ではないか。
黒聖母像の特徴は、基本的に大きすぎる母の手、大人びた幼子イエスの顔ということだが、なるほど、回廊を挟んで対置されたヨセフ像のイエスとは少々違う気がする。
礼拝には段取り悪く5分ほど遅刻。いつものように祈祷文が用意されていると思ったらなかったので、ちょっと困ってしまった。
聖堂は明治に出来たものでロマネスク様式なのに畳張りという素晴らしいものだ。まさに和洋折衷。素晴らしい。ステンドグラスが破れていたが、その向こうの空が青かった。魔女狩りを生き抜いて歴史の風雪に耐えて佇む黒聖母像は何を思うのだろう。
礼拝は観光客のためでもあるのか、朝9時に始まり10時半には終わる。まだ時間があるので、今度は加茂水族館へ。クラゲの展示で有名なところである。期せずして今回は水族館に二回来ることになった。
到着後、駐車場にはやたらと目つきが悪く人慣れした猫さまがいた。僕が餌をもっていないと知るとすぐにプイと、しかし悠々とどこかへ消えていった。釣り人のところでも行くのだろうか。
クラゲが中心ではあるが他の展示もある。たとえば最大サイズのタコは見ものだった。50㎏、3mになるのだとか。これは怖い。しかし、たこ焼き何人分作れるのだろうか。
日本海を目指して車で約30分、南洋に負けない藍と瑠璃が午前中の光を反射している。色々な可愛らしいインテリアとしては最高なクラゲたちを見ることができた。クラゲに力を入れているだけあって、様々な種類のクラゲやら飼育、または映画とアイスにいたるまで制作している。
クラゲという尖った展示は、確かに他の追随を許さないのかもしれない。ちなみに、クラゲが混ざったアイスは、まあ何と言うか観光地の味がした。
昼食は、友人司祭が休暇で来ているので彼らに会うために再び鶴岡市内の教会へ。水色に塗られた会堂で、これはこれで面白い。会堂そのものは秋田から移築されたものだとか。
昭和生まれの30代にとっては懐かしい小学校の教室にあったストーブを見かけ、個人的に会堂のつくりは聖公会が一番落ちつくなぁと思った。木造の美しい会堂である。
だだ茶豆という山形の濃い枝豆を頂戴しつつ、司祭たちと話し、何故か近所にある慶応大学の研究施設で昼食。麦きりという素麺とうどんの中間のようなものを食べた。美味しい。
ということで、レンタカーの時間もあるのでいざ太平洋側を目指して山登り。広がる庄内平野の美しさは、ただただ雄大で、宮沢賢治に代表される東北の詩人や作家たちの感性の前提が、自分の生育環境とはあまりに違うことを知った。同時に、なるほど、このような自然から、美しい言葉が紡ぎだされるのかとも納得。
川沿いを帰りつつ、途中のSAでバイカーの集団にあった。ぱっと見、暴走族かと思ったが、はたして。光が降り注ぎ、山陵に雲の影が流れている。東北の夏は美しい。
しかし、山を登るに連れて雲行きは怪しくなり、ついに霧と青空と雲が見れる絵となった。山の美しさということを初めて実感した旅となった。なかなかに印象い深い旅の記憶。
夕方6時、無事にレンタカーを返して帰着。西日本を中心に生きてきた僕には、真新しく美しい景色を堪能した稀有な旅となった。行って良かった。夕食は、茄子や海老を食べた。おいしい(・∀・)