どっか暖かいとこで猫と静かに海みて暮らしたい

ネットの海の枯れ珊瑚がふく泡...('A`).。。... 書いてることは全部嘘です

にっき:猪熊兎鹿々鼬猫狸、与謝野郡伊根町、眠気

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9月17日 木曜日 雨 夜釣り明け

 16日水曜夜21時過ぎ、まず京都市内を五条まで南下し、国道9号線を亀岡、京丹波と北上。176号をさらに上り綾部、舞鶴と日本海へ向かった。運転はブラフマン、助手席に僕が座り、博士は後ろで爆睡。元々19時に出発ということだったが、博士の研究会出席がのびたので21時出発。ブラフマンが博士と行きたいということで二時間待ったが、博士も博士で調査旅行から戻ってきたあと、研究が立てこんでいるらしく、明日も午後からは研究室にこもるらしい。体力も限界なのか、五条を出たあたりで彼は寝落ちした。

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 途中、コンビニと釣り餌店が横並びにあり、どちらも24h営業。凄い。こんな時間に空いているということは採算が合うのだろうし、客足もあるのだろう。その証左のごとく店内には所狭しと魚拓が張り巡らされている。壮観である。釣り人たちのほころぶ顔が浮かぶようだ。

 記憶では小学校中学年以来、釣りをしたように思わないので実に20何年ぶりとかで、もはや何一つ分からないわけだが、釣りという世界の広がりを思う。釣りといえばこちらのブログである。釣り人の世界を垣間見ることができて楽しい。

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 ローソンに併設された釣り具店を出たのち、ブラフマンに深夜の山道だし怖い話とかはないのか、と聞いた。彼曰く、怖いのは人間であってお化けの類ではないとのこと。確かに、この闇黒の中、躊躇せずに山に入り何かをしている人間というのは、それだけで何かやばい。海岸沿いであるならば、釣り客なり漁師なりだろう。しかし、若く発情した男女以外で山闇の中で蠢くのは、何かしら悪に傾いている。

 ブラフマンがいうには、あとは動物が怖いのだとか。一度、彼の車を煽り抜いていった車両が、次のサービスエリアまでに鹿と派手に衝突したらしく大破したさまを見たという。

 鹿にぶつかって死ぬのは、さも痛そうで勘弁だし、オカシイ人間か何かが出るのも勘弁だな…と思っていたら、前方に何かかたまりのようなものがある。ん?なんかデタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

 あぁ、犬か、と思った。随分でかくて太った大きな犬だな、と思った。光があたり、犬ではないことが分かる。おお、犬じゃなくて豚か…豚???え???

 猪!?ということで、ついに第一種接近遭遇である。写真を撮ろうと思ったが、暗すぎて駄目だった。そうこうしてるうちに元祖豚であられ、家畜化される前の猪さんは、路肩の田んぼへと消えていった。イノシシに突進されても車は壊れるという。怖えええ…。

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 車はさらに山道を進む。民家もあるが、かなり暗い。我が身の根性と人生のごとく曲がりくねった急な坂道を上る。今度は黒いものが横切っていった。ずんぐりとした丸いもの。また大きな犬だ、と思ったが色艶のよい真黒な何か。犬にしては歩き方が変だなと思った。道路沿いの急な山肌に黒い動物は悠然と消えた。

 「いまの何?犬かな…?」「何いってんすか、熊ですよ、熊!」「いや、熊とかいないでしょ、京都やで」「犬なら道路沿いに走ってて逃げますよ、山道には逃げないですよ」「確かに…」自分が野生の熊に遭遇するということを想像したことが一度もないので、現実が受け入れられない。が、いま見たものを理解しようと、すぐにググってみると、どうやら京都府北部にはツキノワグマが出るらしい。

 oh... いや、野生の熊とか遭遇したくないんですけど…(白目) 鹿も出るんじゃないですかね、というブラフマンの予言めく予感の通り、この後、兎に鹿にイタチに白猫にと様々に次々に遭遇。立派な角の生えた雄鹿にいたっては僕らの車を気にするでもなく、すこし右に避けて通り過ぎた。怖い。

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 ちょっと笑ってしまったのは狸。ブラフマンいわく狸はバカなので逃げるにしても道路を車と平行に走ってしまうんだとか。なぜ山道に逃げないのか、と思ったし、しかも走るのが遅い。海沿いで何をしていたのだろう。

 ということで、これらの動物たちに遭遇したが、実に約一時間のうちに立て続けに起きた。ただただ驚くばかりである。人々が寝静まる頃、山中は人間の支配から密かに解き放たれている。

 興味深いのは、それぞれの動物の走る速度や走り方が違うこと。考えてみれば当然だ。「動物」と一括して概念化しているが、その生態は非常に多種多様なのだろう。基本的に「~市」にしか住んだことのない僕としては、動物というのは、動物園や水族館、図鑑と映像で知るものだ。一番身近な動物は犬猫金魚。つまり人間が想像可能な、ハンドル可能な力と形をもったサイズになる。しかし、北九州は海辺の片田舎で育ったブラフマンにとって、山と海、そこに棲息する野生動物たち、すなわち自然は、街暮らしになれた人々の想像を越えた力と大きさの世界である。人間もまたその一部として存在している。そういう動物たちの特徴を把握し理解している彼の視線は、僕にはないもので新鮮であり驚きだった。

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 海岸沿いの道路に出ると、右にはただ黒い空間が広がる。日本海だ。目的地に近付き、無事に到着。深夜1時半。街灯下には先客がいたようで、ブラフマンは少々不満な様子だった。釣りの仕掛けづくりをちょっと手伝い、出来あがったところで雨が降り始めた。明かりに寄せられて小さなフグとイカが泳いでいるのが見えた。走光性というドラえもんで培った知識を思い出す。

 車に戻り、少し休んでから釣り始めるという彼。見慣れぬ景色と寝心地に包まれて、僕は助手席を倒してそのまま寝てしまった。博士は途中起きたようだが、そのまま爆睡である。

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 翌朝七時過ぎ、目覚めると外は雨。どうやら昨晩の連続遭遇で運を使い果たして天気には回らなかったらしい。伊根町は文化遺産ともなっている江戸時代の名残を残す舟屋街である。なんか写真をみたことがあるなと思ったが、ここだったのか。京都の北部というのは、京都市中心部の印象が強すぎて気付かないものだが、なるほど。

 晴れていても美しいのだろうが、雨の観光地というのもまた、その土地の日常感覚が現れるようで僕は割と好きだ。雨の中、ぐるりと伊根町を走り、釣り客と地元の軋轢の話などをブラフマンから聞いた。伊根湾の舟屋は一般人がみても、その成立に疑問を抱く。海に近すぎるのだ。台風なり時化となったとき、どうなるのか。

 ブラフマン曰く、伊根湾は二重に湾となっているので常に凪なのだそうだ。つまり、若狭湾に突き出た半島を逆に抉る形状であり、さらに伊根湾の入り口に青島という小さな島がある。従って、相当に海が荒れても舟屋にまで被害が及ぶことは少ないという。即ち、天然の静海である。

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 朝食は釣果をフライにして食べる予定だったが雨による水温低下のせいか獲れなかったので昨晩買ったお菓子やらパンを食べた。

 雨に浮かぶ舟屋を見て回り、途中のコンビニにて僕に運転交代。雨ぐすむ天橋立を左に眺めながら、伊根町をあとにした。運転しながら今回、期せずして日本三景を訪れたことに気付く。広島の宮島は中国地方出身なので何度か訪れている。仙台の松島は今年訪れた。そして、京都日本海側の天橋立である。もっとも、雨が降っていたので上から見たわけではないが、雨の舟屋も含めて全体として十分に堪能した。

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 無事に高速に乗り雨の中、一路京都市内を目指す。途中のSAで博士に運転を交代。後部座席で窓を流れる景色を見ていたが気がつくと川端通りを走っていた。

 正午前には帰宅。シャワーを浴びて、ちょっと昼寝。博士は研究室に向かった。夕方、起きてきたブラフマンを見送る。有難うございました、と気持ちよく笑う大きな男の小さな車が、夜店屋台の金魚掬いの網目のような京都の路地に吸い込まれていった。

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