どっか暖かいとこで猫と静かに海みて暮らしたい

ネットの海の枯れ珊瑚がふく泡...('A`).。。... 書いてることは全部嘘です

にっき:休暇

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7月19日 水曜日 快晴 梅雨明け

 昨日の昼寝のせいか、寝付くのに時間がかかり、少々寝不足感あるまま起床。10時半に出れば間に合うので、だらだらと準備し、シャワーを浴びていたら約束があったのか、元同居人氏、出発とのこと。彼が洗面用具を忘れていたので慌てて呼び止めて渡した。四泊五日の果てに、全裸の泡まみれのおっさんに見送られる友人よ、多少の同情を禁じ得ない。すまんかった。
 10時半、着替えて外に出た。金がかからず遠いところで本を読むというのが、今回の目的である。海外に出れば金がかかるし、伝手も多いわけではない。必定、慣れになれた土地へと足が向く。もう何度目かは覚えていないが、再び沖縄へ行くことにした。
 一番小さなスーツケースに適当に数冊、また服を三日分ほど詰める。あとは古びてきたNikonD40とタブレットミニPC、充電器の類と洗面用具。先の徳島への出張でも分かったが、最近の旅行環境は僕が慣れ親しんでいたものよりも大きく便利になっているので、この程度でどこへでも行ける。日本が先進国か否か、もはや境界線上にあるように思うが、ケニアのナイロビであろうとロンドンであろうと都市における人間の生活にはそんなに差がない。なれば、必要最低限の用意で何とかなろうものである。
 鍵を閉めて麦わら帽子をかぶった。農作業用のものなので、大きな日陰ができる。その下にスポーツ用の洗濯OKなブラインダーだけかぶっている。これで汗だくになっても大丈夫である。

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 電車に乗り、ターミナルからターミナルを経由して空港へ。久しぶりにJRに乗ったが、フランス人家族らしい一行が隣にいた。大阪では乗客の総入れ替え。そこで皆おりていった。僕はそのまま座って、隣の男子高校生たち、対面に座った母娘とみられる女性ふたりの話を聞きながらスマホをさわる。今回の旅の目的の一つは、スマホをフルに触り倒すことである。とはいえ、ゲームもしないのだが、実況しながら行くのも悪くないだろう。ツイッターを眺めていたら、全国各地で梅雨明けの発表があったとのこと。本格的に夏が来たのだ。
 三宮に到着して時計をみる。たぶん空港についてから食べたほうが良い時間だ。空港で食べると少々高いのだが、まあしかたなし。穴子トロロうどんなるものを食べた。かきあげも頼んだのだが、油っこすぎて残してしまった。出発45分前、ゲート通過。無線マウスのせいか、荷物だけ二回通された。いつも思うけど、空港は楽しい。何かしらの期待めいたものが、人を少しだけ浮かせている。
 時間があるので黒レンガなる珈琲屋にて一杯喫して座った。宿泊先に土産物でもと思い、フレンチトーストを購入。一人だけしかいない店員に「いつも一人ですか」と聞くと、忙しいときは大変だが、暇なときは、こうして店を守っているとのこと。若く甘い顔立ちをした正社員氏である。どこへ行くのかと聞かれ、沖縄へと答えた。都市伝説めいた、実際にはなかなかやばい話について少し話すと、喜んでくれて、さっそく検索してくれていた。ぐぐれば出てくる話なので、楽しんでもらえるだろう。

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 礼をいって搭乗口へ。発進時刻10分前、一般客の搭乗開始。スマホQRを間違って消してしまったので戸惑ったが無事に機内へ。が、入る直前に上司より雑誌の表紙に使いたいから何か写真ないかと聞かれた。ないので、取材先に聞いてくれと返信し、いまより3時間ほど通信途絶の旨を連絡。久しぶりのアスファルトを駆ける鉄鳥の足音に、止めることのできない高揚感と内臓にかかる重力、そして不意に斜めになり遠ざかる関西の西景をみながら、僕は機上の人になった。

 この背徳感はなんだろう。本来、人間には見ることを許されていない景色をみることから来るのだろうか。一生の間、ほぼ飛び続けている鳥がいると聞く。彼らの視点を垣間見ることの、覗きにも似た何かがあるのだろうか。5分を待たず、明石海峡大橋が眼下にみえて、紀伊水道と瀬戸内海の稜線が航跡を浮き上がらせている。京都、大阪から明石まで車で来るならば随分時間がかかるわけだが、さすがに飛行機。さえぎるものがない分速い。

 そんなことを思っていたら今一度、窓がクイとあごを傾けた。鉄鳥は羽に風を受けて四国上空へと進む。機長アナウンスがあり、土佐清水の上空付近、1万2,200mを航行中とのこと。挨拶代わりの機内食としてドリンクが配られたので珈琲を選んだ。スカイマークのアイスコーヒーが好きなのだが、ソラシドではないようだ。沖縄にいく際、よく飲んでいた。思うに、現地についての本を読みながら雲上の青空を眺めてのアイスコーヒーは、なかなかの良質の時間である。

 沖縄については、僕の中でひとつの区切りがついている。一度、試しに一か月ほど住んでみたこと、また自分の撮影した写真と書いた文章が小さな雑誌であるが、表紙を飾ったことなどで、あの南西の島々との自分なりの距離の取り方が見えてきたのだ。こうして1時間45分というわずかで快適な空の旅は進んでいくのだった。

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 無事に着陸して久しぶりの南島の陽光に目を細め、自衛隊の轟音に沖縄を感じる。ずいずいとゲートを出て時計をみると、いまだ到着時刻。予定より早くついたのかと思って、目的地までのバスを待つが一向に来るようすがない。交通整理のおじさんに聴くも方言がキツく、かつぶっきらぼうでちょっと分からなかった。仕方ないので来るまで涼しいところで待つかと座った途端、先のおじさんがわざわざ声をかけてくれた。

 慌てて外に出ると確かにバスが来ている。どうやら写真を撮りまくり、連打したせいか時計アプリの一部がバグっていたようで着陸時刻で止まっていた。まじかよ…。御礼をいい、バスに登場。荷物もあり、面倒なので一番前の席にそのまま座った。が、これがまずかった。南西諸島の暑さの本懐は気温ではなく、その日差しである。圧倒的な光量でじりじりと左腕を灼き、左頬がちりちりと日焼けする。日焼け止めを京都で買ってくるべきだったが、時すでに遅し。約一時間、冷房の意味もない程度に汗ばむ車内に揺られ、さんぴん茶の味と意識が混濁しながら、台風備えの地方都市をバスは進むことになった。

 到着すると見覚えのあるバス停。何度か車で通ったことあるな。にしても暑い。バスの中と大差ない気温である。所在なさげに座る隣のスペイン系と思しき夫妻も汗ばんでいる。迎えが来るまで少しだけ挨拶をした。どうやら僕の目的地から来たようで、これから那覇へ向かうとのこと。逆コースである。

 僕の送迎が来たので、彼らに挨拶をして到着。夕方六時なれど、陽の高さが緯度を知らせている。一年ぶりほどだろうか、久しぶりに会う友人一家の子供たちは大きくなっており、4歳と2歳になるんだそうだ。

 タコスで夕食の歓待を受けて、近所まで夕暮れを見に行った。在沖の友人にいわせれば「おまえは空が青いことに毎日いちいち感動するのか」というわけで、地元の人間にはなんでもない夕暮れであったが、込み入った街から出てきた僕には、その壮大な水平線の淡いグラデーションは、神の創造を思わせるに十分なものだった。星が少しずつ瞬いて、虫や動物の声が聞こえ始める。鈍く光る米軍機も基地に戻り、時折とおる車にいぶかしげに思われながら、しばらくの宿に戻った。とりあえず何もせず本を読めたらそれで良いのだ。だから安価でもっとも遠い場所にきたのだ。休暇である。

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