どっか暖かいとこで猫と静かに海みて暮らしたい

ネットの海の枯れ珊瑚がふく泡...('A`).。。... 書いてることは全部嘘です

にっき:ラノベ・タイトルのような一日

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5月8日 金曜日 快晴

 昨晩、寝たのは12時半だったが何故か五時過ぎに目が覚める。眠い。今日、どう動くかを布団の中でネットみながら一時間ほど考え、また寝ていた。朝一で映画に行こうと思ったが寝てしまったので却下。

 編集より原稿の締切を申し渡されているので、書かねばならない。が、院生氏が自分が読んだ本について書いていいか、とのこと。願ってもないことなので快諾し、彼に原稿料分のメシ一回分とビール二杯を奢ることにした。なので余裕もあり午前中は久しぶりにブログ巡回。楽しい。12月あたりまで遡ってざっと読んだりしたが、年末を最後に更新が止まっているものなどもあり、人間の言語活動が泡沫のものであることを思った。

 昼食は近所のインドカレー屋へ院生氏と。トマトと玉ねぎと人参の胡椒辛いスープを彼は気に入っているのだが、僕はそこまでかな。つか辛すぎる。でもインドカレー屋は昼にくると安いし、お得感ある。

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 食後、バスに乗って繁華街へ。才能と経歴ある人が本を出すというのは、こういうことなのかというほど、友人は連日誰かに会っている。多くの人が会いたいのだろう。良い滞在になるといい。

 とりあえず四条のスタバにて友人を待っていたが、隣に座った外国人が話しかけてきた。スタバのネット回線にログインできないんだとか。一通りの説明と手順を僕も彼も試したが駄目だったので、店の人を呼んでみる。しかし、彼女は英語があまり出来ないらしく伝わらない。待ち時間だし隣の席だし、僕も外国人だったことがあるので積極的介入を決意。で、何がどうなったかは分からないが、なんか接続できた。良かったと思い、また日射しがかかる地下鉄入口に目を移したら彼が話しかけてきた。イラン出身・旧帝大ポスドクで学会発表のために京都に来ているらしい。僕は院生なので少々の親しさもあり僕も何を研究しているのか、イランの宗教事情についてとか話した。

 んで、友人よりLINE。じゃ、行くわ、と用意し出したら「fb持ってる?」と聞かれた。持っているが、僕は匿名主義者なので見つからないだろうとか、そんなやり取りをして、その場で交換。ううむ、こういうこともあるのか。なんか有り難い。じゃぁまた、と手を振り、スタバを出て待ち合わせ場所へ。

 新京極の商店街の小さい方と阪急がつながっているので、そこに僕はいたのだが、友人は大きい出口で待っていたようで、ちょっと手間取ってしまう。が、無事に会い、いざ大阪へ。今日の目的は彼を大阪観光にお連れすることである。コースは日本橋、西成、飛田、天王寺の大阪ダークツーリズム。観光案内の後は、彼の関西ファンのオフ会に僕も出る。帰宅は終電になるだろう。ということで、まず大阪日本橋へ。

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 もう数年来になるがネット仲間でメイド喫茶が大好きな人がいる。メイド喫茶に行くことを業界用語で「ご帰宅」とか「おかえりする」という。彼の好きっぷりは半端なく週に十回のご帰宅とかが普通にあり得る人だ。しかも一つの御屋敷(=メイド喫茶)に何年というスパンで関わっているので、定点観測者となっている。ほのかな恋心を抱きつつも、そこは所詮、旦那様とメイドであり、恋仲には至らず、互いに涙を飲んだ出会いと別れもあったと聞く。

 その彼が、今年になって脱サラした。そして何を始めたかと聞くと、なんとメイド喫茶の経営者になったという。凄すぎる、カッコ良過ぎるだろ、jk。また彼はスポーツに明るい人なのだが、以前、通い詰めたスキー場にあったレストランが店を締めてしまったので、そこで出ていた大好きなメニュー、分厚い蜂蜜がけパンを自分の店のメニューにして引き継いだ。ちょ、カッコ良過ぎんよ、兄貴。マジぱねぇ!

 ということで、僕は友人を連れて、彼の御屋敷へ初のご帰宅である。以前よりも日本橋から遠くなってしまったので、中々に行けないが、大阪に行くときは必ず寄ろうと思う。広い店内で静かに働くメイド好きの彼を見ながら、分厚すぎる蜂蜜パンの甘い味わいの隠し味を堪能した。

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 楽しい時間を過ごしたので、次は地下鉄に乗り西成と飛田へ。地下鉄で行ったことがなかったので、ちょっと道を間違えたが、いまだ残る日本のドヤ街を友人と一緒に回った。物事の高低など恣意的なものでしかないが、ある意味で、この街は、国内第二の都市圏の底だ。匂い、歩いている人、値段、何もかもが違う。この景色も再開発でやがて消えていくだろうが、そのとき、ここにいる人々はどこへ行くのだろうか。入り組む政治と宗教という名前の善意を横目に様々なことを考えさせられる。

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 西成をぐるりと回り、今度は飛田商店街を抜けて新地へ。性格と信仰の傾向として、僕はこういう場所と縁なく生きてきたが大人の社会科見学としては意味がある。政府や宗教のやる福祉よりも、ヤクザや、こういう街の人々の方が、性産業に従事する人々のことを知り考えていることは嘘ではないだろう。最近読んだ本の内容がリアルなんだなと思う。

さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

 

  友人は別段恥ずかしくないらしく、どんどんと歩いていく。一方、僕は、ほとんど水着のような恰好の女性たちを一瞥するのが精一杯で、本当に緊張して喉が渇いた。あられもない姿の女性たちは完全に商品として展示されているのだが、同時に、その商品を換金する手段としてまた通りゆく男たちも消費されているのだ。その実感と違和感が、肌を露わにした名も知らぬ異性の存在感として僕を圧倒している。初心が許されるのは20代前半くらいまでなのだろうが、僕には中々に戸惑ってしまう場所だ。もし女を買うつもりがなくても、男ならば一度、西成から飛田新地を歩いてみると良いかもしれない。他者の性を商品化することで、自らの実存も消費されるということを感得できる場所だろう。

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  一通り歩いて、街を出る。低い土手についた階段を二十段も上がれば立地の良い高そうなマンションが並び部活帰りの中高生が自転車を止めて立ち話している。その先には、国内初の超高層建築である阿倍野ハルカスが屹立する。別世界だ。しかし、振り向けば招き猫ならぬ手招き小母さんと絵に描いたような笑顔の女性たちが醸す艶やかな白桃色の空気が夕暮れに溶けている。西成、飛田、阿倍野。ある意味で、大阪の最底辺と天辺を同時に見る場所。

 立ち上り始めた紅い夜の空気を背に、現代版バベルの塔に向かって歩いていく。街並みは整備された都会のそれに一瞬で戻ってしまう。自分の足で歩くという身体性でしか得られない、この街の上下がある。

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 駅前に到着。まだギリギリ時間があるということで、最後に友人と阿倍野ハルカスへ上る。以前、ここに来たときはまだフルオープンでなかったので入れなかった。地上300m、関西という都市圏が無数の夜光虫のようにチラチラと動いている。

 学生時代にいた梅田の高層ビル群一帯、住んでいた東大阪、生駒山の向こうにある奈良、渡米前にいた神戸や西宮、遠く霞んで見えない実家、淡路の先の高知、周囲より少しだけ暗い西成、夜の底に沈みながら光を増す飛田、西日本を中心に生きてきた僕の世界。米国から帰ってきた際にみた街の夜景が、今、新しい角度で僕を問うていた。

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 時間も遅くなってしまったので急いで地下鉄へ。梅田のスカイビル、神戸六甲山からの景色、NYのエンパイアステート、仙台の夜景、どれも良く思い出深いものだが、ハルカスから見えた全景は何かしら象徴的だった。

 その後、遅刻したが友人のオフ会へ。知人も数名おり、それなりに楽しい時間を過ごせて良かった。面白かったのはラノベ作家の人と知り合いになったこと。専業作家ってすげえなぁ。盛会のままお開きとなり、終電ギリギリで京都へ帰着。イラン人と友人になり、メイドカフェへ行って西成と飛田を回って、地上300mから関西一円を眺めてオフ会に出たラノベ・タイトルみたいな一日だった。

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